新任・若手教授 講演会

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2016.11.03 23:47

第3回工学部新任・若手教授による講演会 〈報告〉

 大阪市立大学ホームカミングデーの特別企画、工学部・工学部同窓会共催の『第3回工学部新任・若手教授による講演会 ~私の研究が目指すもの~』が11月3日(木・祝)15:00~16:50に工学部G棟1階中講義室で開催されました。工学部受験予定の高校3年生3名と工学部同窓生合わせて40人が参加しました。

 講演会は吉田稔行事担当副会長(機械・昭和52年卒)の司会で進行しました。

 講演に先立ち、工学研究科長・工学部長佐藤嘉洋先生から、同窓会の様々な援助に対して謝辞が述べられました。続いて西口克彦同窓会長から、工学部の研究に期待する旨の挨拶があり、講演に移りました。

 一つ目の講演は、機械物理系専攻教授で材料工学がご専門の兼子佳久先生による「ナノ構造金属の構造とその力学特性」でした。
 話題は二つ。まず、ECAP(Equal Channel Angular Pressing)加工によるステンレス鋼の高強度化について。一辺が4mmの正方形断面をもち、途中でL字状に90°折れ曲がった経路をもつダイス(金型)を用いて、ステンレス鋼の4mm角棒材を190℃の低温で押し出し加工を行う。L字状に折れ曲がるところで材料は200%のせん断ひずみを受け、50ナノメートル程度の双晶構造が形成される。押し出し加工を繰り返して行うと、双晶が分断されて100ナノ以下の非常に細かい組織ができる。4回繰り返し加工を行うと、降伏強度は未加工材の7倍に、疲労強度も3倍に達することが示されました。次の話題は、電気メッキを利用したナノ多層膜コーティング。イオン化傾向の異なる銅CuとニッケルNiの電解液では、低電位でCu、高電位ではCu-Ni合金が析出する。異なる電位を矩形波的に繰り返して与えると、厚さ20nm間隔で幾重にも積層させたNi/Cu多層膜が形成され、耐腐食性と強度特性が向上することが示されました。

 二つ目の講演は、都市系専攻教授で耐風工学がご専門の谷口徹郎先生による「より合理的な耐風設計を目指して」でした。 
 建築物にとって、風は地震とともに重要な動的作用で、特に自然風は非定常性が極めて強く、建物周りの流れは複雑です。建物に作用する風力をどう捉えるか、いくつかの研究事例が紹介されました。乱れの小さい風洞実験で、建物に見立てた立方体を流れに45°傾けて置くと、屋根面上で、屋根風上側端部付近から交互にスイッチングする一対の円錐渦が発生していることを流れの可視化写真で示されました。次に、風洞中の角柱周り90点で測定された変動風圧の測定結果を対象に複素POD(Proper Orthogonal Decomposition)解析を行い、変動風圧場の組織的構造を調べた結果が紹介されました。高層建築物の耐風設計では、変動風力への応答として建物が振動するため、応答振動に基づく非定常空気力の評価が重要です。風洞実験や大規模模型を用いた野外実験における変動風圧測定結果を対象に複素型Wavelet解析や直交Wavelet解析を行い、空力減衰力、変位振幅、非定常空気力を評価した結果が紹介されました。

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記事:東 恒雄(機械・昭和41年卒・理事)

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