新任・若手教授 講演会

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2019.11.08 18:21

「第6回工学部新任・若手教授による講演会」の報告

 工学部・工学部同窓会共催の「第6回工学部新任・若手教授による講演会~私の研究が目指すもの~」が「市大ホームカミングデー」の特別企画として11月3日15時から16時20分まで工学部G棟1階中講義室で開催された。同窓会員32名が参加。司会は吉田稔行事担当副会長(機械・昭和52年卒)。
 講師は工学研究科化学生物系専攻教授 米谷紀嗣先生。
 米谷先生のご略歴は、1997年3月京都大学大学院理学研究科化学専攻博士後期課程修了(理学博士)、同年4月大阪市立大学工学部応用化学科助手、講師、准教授を経て2018年より現職。ご専門は物理化学, 化学工学, 反応工学。高温高圧流体の基礎科学および工学的利用に関する研究に従事しておられます。
 講演題目は「超臨界流体の科学と利用技術」。
 はじめに、超臨界流体について水を例にとり解説された。通常の水には氷(固体)、水(液体)、水蒸気(気体)の3つの状態があるが、温度および圧力が臨界点(374℃、218気圧)を超えると水と水蒸気の区別が無くなり、液体に近い密度・溶解力と気体に近い流動性・拡散性を併せ持つ超臨界流体(超臨界水)となる。二酸化炭素も臨界点(31℃、72気圧)を超えると超臨界二酸化炭素となる。超臨界流体に対する様々な物質の溶解度は圧力を少し変化させるだけで劇的に変化する。また、臨界点付近のミクロ構造は分子が密に集まるクラスタリング現象により特徴づけられると解説された。
 超臨界流体の工業的利用は1960年代のドイツにおける研究をきっかけに普及してきた。超臨界二酸化炭素の利用例として抽出(例:カフェインレスコーヒー)、分離(例:クロマトグラフィー)、染色(例:繊維染色)、乾燥(例:半導体ウェハー)、微粒子合成(例:医薬品粉末製造)、また、超臨界水の利用例として有害物質処理(例:PCBやVXガスの分解)、加水分解反応(例:工場排水処理)、リサイクル技術(例:PETリサイクル)が原理とともに紹介された。超臨界水は高圧高温であるため利用にはコストがかかり未だ実験段階であるが、超臨界流体は安全かつクリーンであり、環境に配慮した技術として今後の発展が求められていると指摘された。
 次に、先生が市大着任後にされた超臨界水に関する基礎研究のうち、レーザー分光法を用いたその場観察、吸収スペクトル測定で明らかになった臨界点付近の溶質まわりの水分子クラスタリング現象、超短パルスレーザー照射により生じる溶質まわりの水分子の特異なダイナミクス現象について紹介された。
 そして、超臨界水をものづくりに応用した研究として、超臨界水を用いて金属ナノ粒子、特に銀銅合金ナノ粒子を大量に合成する技術、超臨界水中に二酸化炭素を任意の濃度で混合させ光合成により還元して有機物を効率よく作製する技術、水熱酸化法にフェントン型触媒を併用して従来の反応条件(温度と圧力)を大幅に温和化して難分解性汚染水を処理する技術が紹介された。
 講演のあと、超臨界流体を工業的に応用する際のエネルギー回収、高温高圧下でのバルブの耐久性や漏れ、分子のクラスタリングを生じさせるエネルギーについて質疑応答がなされた。最後に、宇野勝久同窓会長(建築・昭和49年卒)より米谷先生に謝意が述べられ、講演会は終了した。
                               東 恒雄(機械・昭和41年卒・理事)

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